夕方のパン売り場には、朝とは違う空白がいくつかできています。
身近なものをきっかけに、忘れていた短い時間が戻ってくることがあります。ここでは、夕方のパン売り場を一つの場面に絞り、急いで答えを出さずに眺めます。
話すほどでもないように見えることほど、その日の気分を短い言葉で残してくれるものです。
小さなものが記憶の入口になる
残っている種類から選ぶ日は、最初に決めたものより、いま目の前にあるものへ気持ちが動きます。
記憶は順番どおりに戻るとは限りません。匂いや音、手触りの一部から、説明のつかない場面だけが先に浮かぶことがあります。
夕方のパン売り場は、一度気づくと次から少し見つけやすくなります。毎回観察する必要はありませんが、同じ場面がまた現れたとき、前とは違う部分を自然に拾えるようになります。
特別な出来事がない日にも、こうした小さな場面はいくつもあります。言葉にすると短くても、その日の手触りを十分に伝えてくれます。
全部を思い出さなくてもよい
予定と違う一つを選ぶと、いつもの夕食にも小さな変更が加わります。
それがいつだったか思い出せなくてもかまいません。役に立たない断片を持っていることも、日々の面白さの一つです。
こうした場面を眺めるのは、何かを正しく決めるためではありません。自分がどこで少し立ち止まるのかを知るための、短い寄り道です。
一場面だけ、今日へ持ち帰る
浮かんだ場面はメモにせず、今日は少し眺めるだけにしておきましょう。
大きな意味を足さず、目に入ったことをそのまま覚えておくのもよさそうです。
次に同じ場面が来たら、今日とは違うところを一つだけ見つけてみましょう。見つからなければ、それはそれで、いつも通りの一日です。