予定のない休日、本屋へ入ったものの、買う本が決まらないことがあります。表紙を見て一冊を手に取り、少し読んで棚へ戻す。その繰り返しだけで時間が過ぎていきます。
何も買わずに店を出ると、わざわざ来たのにと思うこともあります。それでも、棚のあいだを歩いた時間まで空っぽだったわけではありません。
目的のない棚はゆっくり見られる
探している本がある日は、置かれている場所へまっすぐ向かいます。題名や著者名を確かめて手に取るので、隣の棚はあまり目に入りません。
何を読むか決めていない日は、その逆です。料理の本を見たあとに短い随筆が気になり、気づけば写真集の前に立っていることがあります。順番に意味はなくても、自分の目がどこで止まるかはよくわかります。
すぐ役立つ一冊を選ばなくてもいいところが、本屋を歩く時間の好きなところです。今日は題名をいくつか覚えて帰る。それだけの日も、なかなか悪くありません。
選べないのは読みたくないからではない
気になる本が何冊もあると、一冊へ決めるのが急に難しくなります。今の気分に合うか、家に似た本がなかったかと考えているうちに、手に持った本はまた棚へ戻ります。
選べない日は、読むための時間や気分がまだ一冊の形になっていないのかもしれません。そこで無理に決めると、買ったことだけで満足し、しばらく開かないこともあります。
棚へ戻した本は、消えてしまうわけではありません。題名を覚えていれば、別の日にもう一度探せます。忘れてしまったなら、その日は眺めるところまでだったのでしょう。
手ぶらで店を出ても時間は残る
店の外へ出ると、さっきまで静かだったぶん、通りの音が少し大きく聞こえます。袋を持っていなくても、頭の中には気になった題名や表紙の色がいくつか残っています。
ひとり時間は、何かを手に入れたかどうかだけでは決まりません。寄り道をして、知らなかった本の前で少し止まり、また元の道へ戻る。それくらいの休日も十分です。
次に気になる一冊を思い出したら、そのときまた棚まで見に行きましょう。今日は手ぶらのまま、ゆっくり帰ります。