新しいペンのキャップを外し、紙の上へ持っていきます。インクが出るか確かめたいだけなのに、最初の一行を何にするか少し迷います。

試し書きだから何でもよいはずです。それでも白い紙と新しい道具がそろうと、少しだけ丁寧な言葉を探してしまいます。

最初の文字だけ少し特別に見える

書き始めは、線の太さやインクの色をよく見ます。いつもの自分の字でも、新しいペンから出てくると少し違って見えます。

丸を描いたり、短い線を並べたりするだけでも確認はできます。けれど最後には、何か一つ言葉を書きたくなります。

名前でなくても、今日の日付で十分です。その一行が入ると、店に並んでいたペンが自分の机の道具になります。

立派な使い道はあとから決まる

新しいものには、きれいなノートや大事な手紙が似合いそうです。でも、使う場面を待ち続けると、引き出しの中で新しいままになります。

買うものを二つ書く、箱へ貼る付箋に一言書く。最初の役目は、そのくらい小さくてもかまいません。

日常のメモに使っているうちに、握りやすさやインクの癖がわかります。道具との付き合いは、試し書きのあとから始まります。

書き間違えると気楽になる

何度か使えば、文字を間違えたり線を引き直したりします。新しいペンをきれいに使おうとしていた気持ちも、そこで少しほどけます。

道具は、失敗しないためにあるのではありません。書いて、消して、また書くためにあります。

まず今日の日付を書き、その下にいま必要なものを一つだけ続けてみましょう。