何かを探しているとき、昔聞いた短い言葉が急に浮かぶことがあります。大事な話ではなく、誰が言ったかもはっきりしない一言です。
覚えようとしたことは忘れているのに、どうでもよかった言葉だけが残っています。記憶は、必要な順番で片づいているわけではないようです。
残る言葉は立派な言葉とは限らない
長く覚えている言葉というと、助けられた一言や大切な教えを想像します。もちろん、そういう言葉もあります。
その横には、店で聞こえた注文や、誰かが何気なく言った感想も残っています。意味より音がおもしろかったり、場面と妙に合っていたりする言葉です。
役に立たないからこそ、使い道を決めずに覚えていられるのかもしれません。思い出したところで、何かをしなければならないわけでもありません。
言葉と一緒に場面の端が戻ってくる
短い一言を思い出すと、そのときの明るさや周りの音まで少し戻ることがあります。記憶の中心ではなく、端にあったものが先に見えてきます。
詳しい出来事はもう説明できません。それでも、夕方だったことや、机の上に何か置いてあったことだけはわかる。言葉が小さな目印として残っているからです。
全部を正確に思い出せなくても、その曖昧さのまま眺められます。記録ではないので、きれいに並べ直す必要もありません。
誰かに話すとまた少し残る
なぜ覚えているのかわからない言葉は、それ自体が小さな雑談になります。前後の説明が足りなくても、「こんな言葉だけ覚えている」と話せます。
聞いた人にも、似たような一言があるかもしれません。二つのどうでもいい記憶を並べても、答えは出ませんが、会話にはなります。
次に妙な言葉を思い出したら、消える前に一行だけ書いておきましょう。読み返す日は来なくても、そのメモがあること自体は少しおもしろいものです。